【流されゆく日日05】excite

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夏の夜には朱川湊人『都市伝説セピア』…の巻。

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夜帰ると、近所の商店街で「夏祭り」をやっていた=写真。夏祭りといっても、なんとなく七夕飾りだけのような、なんちゃって縁日のような…風情もありません。

夏祭りというと、ステレオタイプだけど、やっぱり神社の参道、エチレン灯に裸電球の縁日、香具師の怒声、笛太鼓の神楽、浴衣の少女のウフフ&肩車の親子のアハハの声、飛び回るカナブン、団扇バタバタ…でしょう。でも、もう映画の中だけか。

★ 最近読んだ、直木賞作家の朱川湊人氏『都市伝説セピア』(文藝春秋刊。ちなみに、この作品も直木賞候補だった)中の「アイスマン」を思い出した。
僕は東京の外れにいたけど、夏祭りには昔(昭和中頃)なぜか怪しげな集団が来て小屋を造っていたことがあった。
★ ベニヤ板に書きなぐった極彩色の絵の小屋には卑しげなおじさんと煙草を咥えたおばさん、銀玉鉄砲で遊ぶ真っ黒い少年がいた(と思う)。「見せ物小屋」なんて書かれていて、子ども心にも「怪しいぞ→入ってはイケナイ→でも見たいぞ→お金がないから入れないよトホホ」なんて思ったもの。今思うと、あの集団はなんだったのだろう。

★ で、短編『アイスマン』は、そんな昭和の頃の見世物小屋を怪しく描いたものだけど、ですます体で書かれた描写がゾクッとする。
「頭上には布に描いた絵看板が三枚並べられ、どれもが凄まじいものばかりでした。右から『かに娘』『イモリ小僧』『山鳥娘』というタイトルがつけられています。…」
なんて、これでもかのホラーよりも怖そう。他にも、ちょっと泣ける「昨日公園」、目まいがする「フクロウ男」も面白い。寝苦しい真夏の夜には涼しくなる、ちょうどいい一冊でした。

【朱川湊人(しゅかわ・みなと)】 1963年、大阪生まれ。慶応義塾大学文学部卒。出版社勤務を経て、「フクロウ男」で2002年オール讀物推理小説新人賞受賞。ほかにも日本ホラー小説大賞短編賞も。『花まんま』で05年下期直木賞受賞。
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by suginami458 | 2005-08-10 17:54 | 小説・エンターテインメント