【流されゆく日日05】excite

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伊坂幸太郎『魔王』痛快! 編。


ノンストップ! 待ってた! 最新刊『魔王』(講談社)は従来の作風をパワーアップ、積極的に国家・政治にコミットしている。

★ これでもかとばかりに憲法改正・自衛隊問題・ファシズムなど硬派な題材を取り入れ…どうした? 何があった? 伊坂幸太郎34歳,法学部卒。折しも自民党が新憲法草案を発表し、タイムリーな作品(かな)。

【伊坂幸太郎(いさか・こうたろう)】1971年千葉県生まれ、東北大学法学部卒。2000年、『オーデュポンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞でデビュー。03年『重力ピエロ』、04年上期『チルドレン』、下期『グラスホッパー』が連続直木賞にノミネートされる。04年には『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞、短編『死神の精度』で日本推理作家協会短編部門賞。

★ 帯のコピーは「ひたひたと忍び寄る不穏と、青空を見上げる清々しさが共存する、圧倒的エンターテインメント!」。でも、これだけじゃあない。従来の作品には確かに社会風刺もあったが、それほど気にはならなかった。だけど、今作は……

 (本文から)「日本国民は」俺は、ある本に書かれていた文章を思い出した。ファシズムについて述べられた本で、「日本の国民は、規律をまもる教育を充分に受けていたため、大規模な暴動を起こすことはなかった」とあった。まさにそれが頭をよぎる。はじめて読んだ時、俺は、「やはり俺たちは飼い慣らされているのだな」と納得したものだ(後略)。
 
 (本文から)……これがファシズムの恐怖ではないのか。ファシズムとは何か、という問い掛けに明確な答えはない。(中略)強いて言えば、ファシズムとは、「統一していること」という意味、それだ(後略)。

 (本文から)……「反動だよ」マスターは言う。「俺たちはあまりに、自由だとか民主的だとかそういうものを大事にしすぎたんじゃないのか? 統率は必要なのに」(後略)

★ ……と、真っ向から民主主義とは? 国家とは? 憲法九条改正などと格闘。ストーリーの基調低音になっている。文体もいつになく力強いぞ。これまでの村上春樹路線はやめたのか? 
ムードとイメージに流されやすく、飽きやすい大衆(国民性)に警鐘を鳴らし、宮沢賢治の詩を横糸に織り込みながら、「覚悟しているのか。考えろ考えろ考えろ考えろ、そして選択しろ」というのが読者へのメッセージか。

★ この一冊は(人は死ぬけど)ミステリーにあらず。巻末の参考・引用文献を先に見ると、ある程度の方向が分かる。

【オモシロ度=★★★★★】 伊坂にいささかハマったのだ。
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by suginami458 | 2005-10-30 17:52 | 小説・エンターテインメント

■ 紅葉はどうなっているのだ?/鎌倉編。

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秋だ! そういえば紅葉はどうなっているのだ――と、知人と鎌倉に行った。

★ まずは鶴ヶ丘八幡宮。早い話は、まだでした=写真。マゼンタ7%+BL20%+Y10%+C70%といったところ。まあ、古都だから早く色づくなんて古都もないのだから当然。
でも、ここは木々のレイアウトがいいので、本番は期待できそう。赤、オレンジ、茶、黒緑…この配置の妙が大事なのだ。自然のアートディレクターは本当に凄い。上の山のほうは少しだけマゼンタが濃くなっていたような。

★ 疲れて珈琲を飲むには、小町通りを少し行った路地裏(というか住宅街の中)にある「ミルクホール」がいい。ライトなジャズが流れ、古道具屋のなかといった感じ。センスの良さを感じられる店。コーヒー600円。

★ で、次は北鎌倉の円覚寺。ここも全然でした。本数が少なく、桜の季節も見栄えがしなかったので、秋もあまり期待できそうもないなあ。でも、ここは駅の前という絶好のアクセスの良さを誇る寺。上から見下ろした、山門に切り取られた風景は小津映画のシーンみたい。

★ 便利になったなあ、鎌倉。湘南新宿ライン乗り換えなし一本59分なのだ。でも日曜夜の上りのグリーン車両はオバサンたち占拠状態で‥‥トホホ。

【10月下旬の紅葉=★☆☆☆☆】
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by suginami458 | 2005-10-25 18:31 | 小説・エンターテインメント

五木寛之氏の「論楽会」に行ってきた、編。

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五木寛之氏の百寺巡礼完結記念「五木寛之論楽会/東京篇」に行ってきた(主催=講談社)=写真はパンフ。五木氏は少し風邪気味も、1600人の観客を前に「今は皆が病んでいる時代ですから、風邪ぐらい……」とか。

★ 全席指定という、従来にない形をとった会場は満員御礼。寺参り達成記念会とはいえ、若い高校生ぐらいの女のコ&男のコから高齢者まで、多彩な参加者。当然、ご婦人が圧倒的だけど(水上勉を継ぐ哀愁のイケメン作家健在なのだ)。

★ プログラムは3部で、講演、トークあり、津軽三味線ライブあり、コンサートありの、音楽好きな五木氏らしい構成。会場には、電通関西やら、大日本印刷やらからの花輪がズラリ。さすが、文壇長老。

★ 五木氏の講演の一部。
ここ数年、自殺者が年間3万2000人を超えています。死者7000人で交通戦争というのなら、この自殺者数をなんと考えればいいのか……いま、日本は国全体が病んでいるのです。
3万2000人は「成功」した人で氷山の一角、実際はこの10倍以上が自殺を考えているわけです。こんな社会を私たちはどうすればいいのか。

朝、新聞を読むと「親が子を殺した」「中学生が親を殺した」という痛ましい記事にも、私たちはマヒし始めている気がします。明治以来、私たちは情を捨てたドライなプラスチックのような社会を見事につくりあげてしまいました。なんともいえない悲しみを覚えます。
いまこそ、私たちは親鸞聖人の言う「悲泣せよ」を考えなければいけないと思います。

★ そうなのだ、ウエットになるのだ。

……というわけで、10月末には五木さん、またまた新刊個人版新書が講談社から刊行だって。ちょっと多すぎないかなあ。
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by suginami458 | 2005-10-20 23:07 | 小説・エンターテインメント

元・武鬪派組長「山本集」展に行ってきた、編

君は燃える赤富士を見たか! 山本集個展「オレの絵を見てくれ2005」(竹橋パレスサイドビル1F画廊)に行った。

【山本集(やまもと・あつむ)】昭和15年、奈良県生まれ。浪商球児から奈良智辨学園の野球部初代監督。その後、様々な職業を経て任侠道へ。諏訪一家山本組組長となり、武鬪派として名を挙げた。
平成元年、組を解散して「日本一の画家」を目指す。

★ 以前、日刊スポーツでエッセイの連載をしていたときから気になっていた作家。ヤクザ→作家(山本氏は画家だけど)転身といえば、作家・安部譲二さんがいるけど、凄みは山本氏の方が上かも。 

★ 個展会場にいらっしゃったので、お声をかけようとしたけど、ダブルの黒スーツ、大きな声、黒づくめのお取り巻きの方々…ちょっと引いてしまい、かけられませんでした(なにげなく耳にした会話も「おう、例の五条のシマのスナックでな…ガハハ」なんて仰っていて…)。

★ で、絵は…といえば、その人生のごとくダイナミックな画が中心。
3畳ぐらいからA3ぐらいの大きさの絵まで多彩。青空をバックにした「赤富士」シリーズも圧巻だけど、僕は森の径に陽が差し込む絵が、なんともいえない優しさを感じて見入ってしまった。光と影のバランスがいいなあ。買いたいけど、数百万円がザラなので、持ち合わせがなく(本当か)またの機会にしました。

★ 豪快さと繊細さ。清と濁。元・武鬪派親分は心優しき叙情派なのだ(きっと)。
HP=http://www.interq.or.jp/japan/atsumu/
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by suginami458 | 2005-10-19 16:06 | 小説・エンターテインメント

この文庫!/五木寛之『僕はこうして作家になった』編。


幻冬舎が創立11周年記念事業として、いわゆる文庫内文庫『幻冬舎にんげん文庫』を刊行した。
早い話、五木寛之氏の専用文庫。新刊6冊一挙刊行。

★ 普通、文庫化するには2年ぐらいが必要だけど、そこは角川流の幻冬舎、流儀なんて関係なく、他社の『気の発見』(平凡社)『みみずくの夜メール』(朝日新聞社)を素早く収録(もちろん、手打ちは済んでいるんだろうけど)。

★ で、『僕はこうして作家になった/デビューのころ』。
かなり前に集英社から出された(単行本時のタイトルは『デビューのころ』)が同社も文庫にせず、絶版寸前だったもの。五木氏が文壇デビューするまでの青春時代、様々な職業遍歴を書いたもので、「告白的自伝」とカバーにあるけど、本当か。

★ 自伝とあるけど、本当のことを書いたら大変なことになるのは、だれでも分かる。ま、適当に当たり障りがない程度にして、青春作家を演出しよう…がありあり。内容もアレは書いてないし、コレも書いていない(でも、なぜ集英社が文庫にしなかったんだろう? できない何か事情があったのか、改変期間が必要だったのか)。

★ でも、改めて読むと、名も無き一人の青年が、目に見えない大きな力によって上昇していく過程が読み取れる。ここが五木さんの言う「他力/サムシング・グレート」でしょう。
新刊6冊とも全部ワンコイン500円(税込み)は「若い人に手軽に読んでもらいたい。僕も学生時代に安い文庫にはお世話になったからね」と言う五木氏らしい演出。

【オモシロ度=★★★☆☆】
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by suginami458 | 2005-10-13 00:02 | 小説・エンターテインメント

映画「カーテンコール」は……編。

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映画「カーテンコール」を試写で観た=写真(C)「カーテンコール」製作委員会。

★ 昭和30年代の下関、映画上映の幕間に歌や物真似を行う素人芸人(藤井隆)がいた。40年後、彼の消息を探る女性フリーライター(伊藤歩)と、芸人の現在が交錯したとき、二つの家族の再生物語を生んだ…。

★ メーンコピーは
「その記憶は、泣きたくなるほど楽しかった。/お父さん、あなたの昭和は幸せでしたか?」。
僕の好きな藤村志保さんが好演。いつもは野際陽子ばりの冷たい役だけど、今回は時代に取り残されたオバサン役。いいねぇ、志保さん。監督は「半落ち」の佐々部清。
驚いたのは、あの井上尭之さんの好演。ザ・スパイダース→井上尭之バンドのベテランミュージシャンが、優しく明るい笑顔を見せる。なんともいえない癒し系の笑顔、ああいう年の取り方をしたい。

★ でも、いま「昭和」のブームなのかな。来月公開予定の「ALWAYS/三丁目の夕日」も昭和30年代が舞台だし。僕は、あの時代が決していい時代だったとは思わないけど。あまり「いい人」の集まりばかりで描かないで欲しい、と思う。

【「カーテンコール」面白度=★★☆☆☆】
途中から話が韓国に飛んで、複雑に……
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by suginami458 | 2005-10-11 23:06 | 小説・エンターテインメント

「デ・キリコ展」で異次元への旅なのだ編

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部屋に飾るなら、この作家の作品がいいなあ…と思っていた(もちろん、印刷物の話だけど)。

★ やわらかさを感じる色遣いの妙、見事な構図、不思議さの中に奇妙な懐かしさを感じる。デ・キリコの絵画コレクション「巨匠デ・キリコ展」=写真(C)大丸ミュージアム。ずっと見ていても飽きないくらいの圧巻の110点。習作もあって、すばらしいデッサン力なのだなあ、と感心(当たり前だ、イタリアの巨匠だぞ)。

【ジョルジョ・デ・キリコ】イタリアが生んだ20世紀最大の画家(1888~1978)。その不思議な記憶の世界は「形而上絵画」(メタフィジカ)と呼ばれ、シュールレアリストたちに大きな影響を与えた。1920年ごろから作風を一変させて写実絵画に傾斜したが、晩年再び作風を戻し、新形而上絵画(ネオ・メタフィジカ)を確立した。

★ 見ていると、なんとなく不安と孤独を感じてしまうが、しっかりとした線と、不可思議ながら極めて立体的な構成が現実を忘れさせて,僕たちを異次元空間へ誘ってくれる。
写真は「不安を与えるミューズたち」(1974年)で、これらミューズ作品シリーズもいいけど、僕は「ユリシーズの帰還」に見入った。アパートの中の大海、さざなみのなか小舟を漕ぐ女神……文字ではとても表せないから、やっぱり観るしかない。

★ 関連グッズとして、横尾忠則氏のTシャツもオススメ。横尾氏らしくない(?)シンプルなデザインだった。

【芸術の秋だ! 観て良かった度=★★★☆☆】
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by suginami458 | 2005-10-09 23:02 | 小説・エンターテインメント

東京都庁もピンクに色づく秋なのだ編

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夜の西新宿。見上げると、都庁がピンク色だ=写真。

★ 恒例「乳がん早期発見・検診受診普及啓発キャンペーン」の一環で、夕方6時からライトアップしている(10月10日まで)。実際に見ると、かなり赤に近いピンク色。「きれい」というよりは不気味&違和感の方があるけど。

★ 以前は新聞でコラム風記事にしていたけど、最近はあきたのか、重大ニュースで紙面が埋まっているのか掲載されなくなった。がんばれ、ピンク。新宿には「ピンク」が似合う。

★ ちなみに、都庁のライトアップは高層部分だけのため、下水道局の汚泥消化ガス発電の「バイオマス電力」を使用し、かなり安いという。

秋だから、高層建築も色づくのだ。

【新宿はピンクの街度=★★★☆☆】
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by suginami458 | 2005-10-07 23:10 | 小説・エンターテインメント

この文庫!/浅田次郎を通勤電車で読んじゃいけない、編

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しまった! 間違えて持ってきてしまった! 『椿山課長の七日間』(朝日文庫)=写真、後方は新潮社「波」10月号で、表紙は浅田氏。

読み落としていた浅田次郎本。きっと泣くだろうな…通勤電車の中で涙ぐむのはイヤだな…と通勤途中には絶対に読むまい、と思っていたけど。

★ 46歳で過労死した椿山課長と、間違えられて殺された心優しきヤクザの武田親分、交通事故死した7歳の雄太少年らが家族らに別れを告げるため、あの世から「現世」に舞い戻った。だが、彼らが見た家族たちとは…。

★ 「家族の絆」は浅田ワールドのキーワード。僕は、その中でも「父親」への慕情が突出していると思う。デビュー作の『地下鉄(メトロ)に乗って』、直木賞作の『鉄道員(ぽっぽや)』、短編『角筈にて』など、父親への愛と感謝を描いたもの。
なぜ、「母親」ではなく、「父親」重点なんだろう。普通、お涙頂戴なら「母親」でしょう。もちろん、『天国までの百マイル』もあるけれど。

★ 泣けた本文から…。
 その晩、ぼく(注=雄太少年)はおじいちゃんがかつぎこまれた病院で、陽ちゃん(注=椿山課長の子。7歳)とさよならをした(中略)。
 おじいちゃんは死んじゃった。まるで連れてってというみたいにぼくの手を握ったけれど、おじいちゃんとぼくは行き先が違います。(中略)陽ちゃんはグズグズです。むりもないけどね。ベンチの上でおしりをずらし、ぼくは陽ちゃんをだきしめた。感情をことばで言いあらわせないとき、人間はこうするしかないんだな(中略)。
 ぼくは陽ちゃんの耳元にささやいた。七年の人生の、思いのたけをこめて。
 「ぼくの分まで生きてね、陽ちゃん」(後略)

★ 「悲しさ・感情をことばで言いあらわせないとき、だきしめるしかできないんだ」は、仏教の同治(どうじ=慈悲の悲にあたる)に通じる表現。本当だよね、悲しいときは一緒に涙するしかできないよね。

……絶対に、浅田氏の術中に嵌まるまいと思っていたけど、ダメでした。読み落としていてよかった。

【泣かせるテクニックに嵌まったけど、まあ、いいか…泣けた度=★★★★☆】
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by suginami458 | 2005-10-04 21:25 | 小説・エンターテインメント